5月に、万能ねぎを地植えにした。紫蘇と一緒に園芸店で買ってきた苗で、植える前の晩にもう半分収穫して蕎麦の薬味にしてしまった、あのねぎである。
先日、思い出して見に行った。

ラベルだけが残っていた。
雑草に完全に飲み込まれて、どれがねぎでどれが草か分からない。よく見ると細い葉がまだ何本かあるような、ないような。忘れられていた。
で、また買う
反省したかというと、していない。園芸店に行ったら、わけぎのポット苗と、あさつきの球根が並んでいた。


最近うちはスパルタ農法が好調である。バジルも紫蘇も、甘やかさないほど茂っている。ねぎもいけるのでは。
買った。
そして袋を開けて、球根の多さに笑った。ネットの中にぎっしり入っている。
手持ちのプランターは小さいものしかない。たぶん本当はもっと深いものを推奨されるのだろう。まあいいか。そこはズボラ。

わけぎの苗は3かけしかなかったので、余ったエリアにあさつきの残りを詰めた。

ぎゅうぎゅうである。
ところで、あさつきとわけぎって何が違うの
植えながら、ふと思った。要はどれもネギでは?
調べたら、まったく違った。
3つのうち、植物として「ねぎ」なのは万能ねぎだけだった。
- 万能ねぎ=ねぎそのもの。長ねぎも青ねぎも小ねぎも、ぜんぶ同じひとつの種(Allium fistulosum)で、太さと育て方が違うだけ
- あさつき=ねぎとは別種。ハーブのチャイブ(エゾネギ)の変種で、日本の山に自生していた山菜が起源
- わけぎ=ねぎと、エシャロット(玉ねぎの仲間)の雑種。だから種ができず、球根でしか殖えない
ねぎの仲間ではあるけれど、「ねぎの大小」ではなかった。
| 根元 | 味 | 得意料理 | |
|---|---|---|---|
| あさつき | 球根状にふくらむ | 辛味と香りがいちばん強い | 薬味。少量を効かせる |
| 小ねぎ(万能ねぎ) | まっすぐ | クセが少ない | 薬味から汁物まで万能 |
| わけぎ | 球根状にふくらむ | 辛味が少なく甘い・ぬめりが出る | ぬた、和え物、チヂミ。たっぷり食べる |
見分けるなら、束を裏返して根元を見るのがいちばん確実だ。球根みたいにぷっくりしていればあさつきかわけぎ、まっすぐならねぎ。球根から育つか種から育つかの違いが、そのまま形に出る。太さでも見分けられそうな気がするけれど、数ミリの差なので袋越しにはまず分からない。
ついでに厄介な話をすると、売り場で「あさつき」として売られているものは、実は葉ねぎを細いうちに収穫したものだったりする。わけぎの名前で「わけねぎ」という別のねぎが並んでいることもある。ラベルと中身が一致していないことがある、というのがこの野菜たちの現実である。
ちなみに「万能ねぎ」は品種名ではなく登録商標で、正式には福岡県JA筑前あさくらの「博多万能ねぎ」を指すのだそうだ。名前の由来は「生でよし、煮てよし、薬味によし」。一般名は「小ねぎ」。うちのラベルにも堂々と万能ネギと書いてあったけれど、まあそこは。
「あさぎ」と言ってしまう理由
あさつきのことを、つい「あさぎ」と言いたくなる。あれは何なのか。
あさつきは漢字で「浅葱」と書く。ねぎより葉の色が浅い(薄い)緑だから、浅い葱。そしてこの二文字を色の名前として読むと「浅葱色(あさぎいろ)」になる。緑がかった淡い藍色のことで、新選組の羽織の色といえば伝わるかもしれない。
つまり同じ「浅葱」でも、野菜として読めばあさつき、色として読めばあさぎ。混ざるのも無理はない。ついでに言うと、ねぎの古い名前は一文字で「き」といって、その名残が「浅葱」「分葱(わけぎ)」に残っているらしい。
薬味を使い分けられる大人には、まだ遠い。
ねぎのうんちく、いくつか
風邪のとき首に巻くやつ。調べてみたら、起源を示す文献は見つかっておらず、効果を確かめた臨床試験も存在しなかった。完全に言い伝えの側の話である。ただし、ねぎの白い部分は「葱白(そうはく)」という名前のれっきとした生薬で、漢方では風邪のひきはじめに使われてきた。こちらは食べる使い方。首に巻くのとは別物だ。もしやるなら、汁で肌がかぶれたり、温めすぎて低温やけどになったりするので、直接肌につけないこと。
ネットでよく見る「ネギオール」という成分。これ、学術的な裏づけが確認できない名前らしい。日本植物生理学会のQ&Aで研究者が「専門辞典に載っていない」と回答している。健康記事に堂々と出てくるので、私も信じていた。
鴨がネギを背負って来る。鴨肉にねぎまで付いてくればすぐ鴨鍋ができる=この上なく好都合、という意味。冬の鴨は脂がのり、ねぎは寒さで甘くなる。季節がぴったり合っているのがミソ。
焼き鳥の「ねぎま」の「ま」は、間ではなく鮪(まぐろ)。江戸時代のねぎとマグロの鍋「葱鮪鍋」が由来で、戦後にマグロが高くなって鶏肉に替わったのに、名前だけ残った。
九州のねぎ。熊本にはわけぎ系のねぎをぐるぐる巻いて酢味噌で食べる「一文字ぐるぐる」という郷土料理がある。天明2年、熊本藩の倹約令をきっかけに考案されたと伝わる、安くて旨い酒の肴だ。南九州ではわけぎを「千本(センモト)」と呼ぶ地域もあるらしい。
ウェールズの国章はねぎ。正確にはリーク(ポロねぎ)で、兵が味方の目印として兜に着けたという伝説による。シェイクスピアの『ヘンリー五世』にも出てくるので、少なくとも400年以上前から続く習慣だ。3月1日の聖デイヴィッドの日には、今も帽子にリークのバッジを着ける。
🔴 うちのコには、ぜったいにあげない
これは書いておかないといけない。
ねぎ類は犬と猫に中毒を起こす。長ねぎも玉ねぎもニンニクもニラも、そしてあさつきもわけぎも、ぜんぶ対象。うちで今まさに育てているものが、まるごと危険物だということになる。
知らなかったことがいくつかあった。
- 加熱しても乾燥させても毒性は消えない。むしろ乾燥品や粉末は成分が濃縮されて危ない。ねぎを煮た汁、ねぎを取り除いたあとの料理も同じ
- 症状はすぐに出ない。赤血球が壊れる溶血は、食べてから3〜5日後に起きることが多い。直後に元気でも安心できない
- 解毒剤はない。食べたかもしれない時点で、様子を見ずに動物病院へ電話する
- 柴犬や秋田犬など日本犬は遺伝的にリスクが高いとされている
家庭菜園でねぎを育てる側として、気をつけることも具体的だった。プランターや畝に犬を入れない(葉はちょうど犬の口の高さにある)。収穫したものを玄関やカゴに置きっぱなしにしない。刻んだまな板や包丁を舐めさせない。生ゴミやコンポストに入れるなら、掘り返せない構造にする。そして干しねぎは特に厳重に。
ぎゅうぎゅうのプランターは、うちのコの届かない場所に置くことにした。
永久機関の完成である
園芸店の置き場に説明書きがあった。刈っても生えてくる。葉が茶色く枯れたら掘り上げて、干して保存する。
……それ、来年また植えられるということでは?
調べたら、本当にそうだった。しかも思っていた以上だった。
- 収穫は「刈る」。草丈20〜30cmになったら、地際3〜4cmを残して切る。株ごと抜かない。成長点が株元に残るので、追肥をすれば20〜30日でまた伸びてくる。1シーズンに3〜4回穫れる
- 秋と春の2回、収穫期が来る。秋(10月中旬〜11月中旬)に穫って、冬を越して、春(3月〜5月上旬)にまた穫る
- 6〜7月に地上部が枯れる。これは枯死ではなく休眠。葉が黄色くなったら球根を掘り上げて、土を落として1日天日干しし、ネットに入れて風通しのいい日陰に吊るしておく
- そして秋、また植える。
極めつけがこれで、あさつきは1球が7〜8球に分球するらしい。減るどころか増える。永久機関どころか、増殖機関だった。
ただし2〜3年に1回は株分けして植え替えないと、混み合って細くなる。永久機関にも定期メンテナンスは要る。
正直に言うと、ちょっと早かった
調べていて分かったのだが、あさつきの種球の植え付け適期は8月下旬〜9月中旬。うちのように暑い地域は、残暑を避けて9月に入ってからが安全域だった。8月アタマは、早い。
問題は「早い」というより「まだ暑すぎる」ことで、実害は高温期に球根が腐ることと、発芽が揃わないこと。致命的な失敗ではないけれど、しばらくは半日陰に置いて、水は乾かし気味、朝夕の涼しい時間にやることにする。
ぎゅうぎゅうに植えた件も、正直よろしくない。小ねぎのように「葉を刈って穫る」だけなら密植は平気なのだが、あさつきとわけぎは球根が勝手に分かれて増えるので、1シーズンで過密になって葉が細くなる。対策は決まっていて、今季は葉ねぎとして刈って使い、来年6月に掘り上げるときに株間を取り直せばいい。増える前提の植物なので、やり直しがきく。
ひとつだけ合っていたのが植え方の深さで、球根の先が土から少し見える浅植えが正解だった。埋めなかったのは、単にめんどくさかったからである。
あと、埋もれた万能ねぎ。あれもねぎの成長点は株元にあるので、根が生きていれば復活できるらしい。草を抜いて、地際3〜5cmで刈り込んで、追肥して、土を寄せる。……やります。たぶん。
| 植えたもの | あさつき(種球)/わけぎ(ポット苗3株) |
| 時期 | 2026年8月上旬(適期は8月下旬〜9月中旬。暖地は残暑を避けて9月から=ちょっと早い) |
| 植え方 | 球根の先が見える浅植え。小型プランターに密植+余りは丸鉢へ |
| メモ | 収穫は地際3〜4cmを残して刈る(抜かない)。6月に掘り上げて干せば翌年また植えられる |
今日も角砂糖ひとカケ🧊
使い分けられる大人に、なりたい。