6月のはじめ、ボラ土だけの鉢にバジルの苗を2本植えた。根っこを半分に切って、液肥だけで育てる永田農法。そのときの話はこちら。

あのとき私は「買った時の葉が、いちばん立派だった」と書いた。
あれから、ふた月。

前言、撤回。
夕方、ぐったりする
夏のバジルは、とにかくよく飲む。朝たっぷりやったのに、夕方には葉が垂れてうなだれている。最初は枯れる合図かと思った。
でも夕方にもう一度水をやると、翌朝にはしゃんと戻っている。調べてみたら、真夏はよくあることらしい。日中の蒸発が根の吸い上げを追い越すと、葉は自分から面積を減らして水を守る。翌朝までに完全に戻るなら、心配はいらない。
ややこしいのは、根腐れも見た目がそっくりなこと。見分け方はひとつだけで、土を指で触ること。土が乾いていてしおれているなら水切れなので、水をやる。土が湿っているのにしおれているなら根のトラブルなので、水をやってはいけない。ここを間違えると、良かれと思って止めを刺すことになる。
ちなみに、鉢をコンクリートに直置きしていると鉢ごと熱くなる。レンガや台で浮かせて、株元にマルチを敷くほうが、水やりの回数を増やすより効く。この前のチップがまさにそれだった。
ガパオは、料理名じゃなかった
こんなに茂ると、今度は食べるほうが追いつかない。
我が家でいちばん人気なのはガパオライス。ひき肉と一緒にナンプラーで炒めて、目玉焼きをのせる。葉をごっそり使う料理なので、茂った鉢とは相性がいい。というよりこの鉢は、ほぼガパオのために茂っている。
で、調べていて驚いたのだけれど、「ガパオ」は料理名ではなくハーブの名前だった。タイ語でホーリーバジルのこと。つまり本場の「パッ・ガパオ」は直訳すると「ホーリーバジル炒め」で、材料名がそのまま料理名になっている。ついでに言うと「ガパオライス」という呼び方自体が日本で生まれたもので、タイのお店でそう頼んでも通じないらしい。
そして我が家の鉢にいるのはスイートバジル。日本で「バジル」として売られている苗も、スーパーのパックも、たいていこれだ。ホーリーバジルとは同じ仲間ではあるけれど別の種類で、香りはクローブや黒コショウに近いスパイシー系。スイートバジルの甘い香りとは方向が違う。ホーリーバジルは収穫するとすぐしおれてしまって日持ちしないので、そもそも海外に出回りにくいのだそうだ。
じゃあうちのは偽物か、というとそうでもなくて、日本のガパオライスはスイートバジルでの代用が事実上の標準になっている。香りが穏やかになるぶん、ナンプラーと唐辛子とニンニクをきかせれば十分それらしくなる。本場とは違う、というだけの話。
作るときのコツがひとつ。バジルは火を止めてから入れる。余熱でしんなりさせるくらいがちょうどいい。一緒に炒め込むと、せっかくの香りが飛んでしまう。これはガパオに限った話ではなくて、ジェノベーゼもカプレーゼもトマトソースもスープの仕上げも、バジルはぜんぶ最後だ。
ちなみに本気で本場の味にしたい人へ。ホーリーバジルは日本でも種や苗が手に入るし、乾燥パウダーも売っている。……来年の鉢が、ひとつ増える予感がしている。
穫れすぎても、困らない
大量に穫れても平気なのは、そのまま冷凍できるから。
洗って、水気をしっかり拭いて、葉を茎から外して、保存袋に入れる。それだけ。下ゆでもいらない。バラバラにしたいなら、重ならないように並べて一度凍らせてから袋に移すと、葉どうしがくっつかない。
使うときは、解凍しない。凍ったまま袋の上から手で揉むと、それだけでみじん切りになる。解凍すると水が出て黒くなり、香りも飛んでしまう。だから用途は加熱料理限定で、パスタ、スープ、カレー、炒め物には十分使える。カプレーゼの飾りには向かない。香りが元気なうちに使うなら1か月、加熱用と割り切るならもう少し先まで。
逆に、意外と向いていないのが冷蔵庫。バジルは熱帯生まれで、10℃を下回ると低温障害を起こして黒くなる。あの黒ずみは腐ったのではなく、凍傷に近い。数日で使い切るなら、コップに水を挿して涼しい部屋に置いておくほうが長持ちする。とはいえ真夏は部屋も暑いので、そのときは水気を拭いて湿らせたキッチンペーパーで包み、冷蔵室ではなく野菜室へ。
バジルは、一種類じゃない
| 名前 | 香り | 得意な料理 |
|---|---|---|
| スイートバジル | 甘くフローラル | パスタ、カプレーゼ、ジェノベーゼ。日本の「バジル」はほぼこれ |
| ホーリーバジル(ガパオ) | クローブ・黒コショウ系 | ガパオライス。葉に産毛があるので加熱向き |
| タイバジル(ホーラパー) | アニスのような甘さ | グリーンカレー、トムヤム。生のまま添えても |
| レモンバジル | 柑橘系 | 魚、鶏、サラダ、ハーブティー |
ときどき見かける「バジリコ」は、バジルのイタリア語。品種の違いではなく、ただの呼び方の違いだ。
旬と、8月にやること
バジルの旬は7〜8月。摘心と切り戻しを続ければ、関東あたりで10月ごろまで。うちのような暖かい土地なら11月まで粘れるはず——といっても今年が初めてなので、これは期待込みの見込みだ。ただし終わりは急で、冷え込みに当たると葉が一晩で真っ黒になって終わるらしい。苗のラベルには「多年草」と書いてあるけれど、日本の冬は越せない。実質、一年草だ。
そして8月にやるべきことがふたつ。ひとつは、花芽が上がってきたらつぼみのうちに全部摘むこと。花が咲くと葉が硬くなって香りが落ち、株が種づくりに切り替わって一気に勢いを失う。
もうひとつは、伸びすぎていたら思い切って3分の1から半分に切り戻すこと。真夏なら2〜3週間で新しい枝が出てきて、秋まで引っ張れる。株を作り直すなら8月のうちが安心(暖かい地域でも9月上旬まで)。ひとつだけ注意なのが切る位置で、必ず葉か小さな脇芽が残っている節のすぐ上で切ること。葉が1枚もない茶色い茎のところでバッサリいくと、新芽を出せずに株ごと枯れてしまう。
切った分は、まるごと収穫になる。つまり鉢がモサモサな人は、いま切っていい。
| 育てたもの | バジル(スイートバジル)苗2株 |
| 用土 | ボラ土(日向土)のみ・液肥で追肥=永田農法 |
| 時期 | 6月上旬に定植 → 7月下旬にこの茂り |
| メモ | 夕方しおれても翌朝戻るなら正常。土が乾いていれば水切れ、湿っているのにしおれていれば根の異常 |
同じボラ土スパルタ組の紫蘇は、こちらで元気にしている。
今日も角砂糖ひとカケ🧊
しおれるのは、飲んでる証拠。