庭の片隅に、ニラが植えてある。
10年以上前、ご近所さんが株を分けてくれたものだ。以来ずっとほったらかしで、気が向いたときだけ刈り取って使ってきた。夏になると雑草に埋もれ、存在を忘れられる。今年も忘れていた。

それでも、生きている。植えた人の顔より長く庭にいて、水ももらわず、肥料ももらわず、10年。何もしていないのにずっと生きているのは、すごい。
収穫しなくなった、本当の理由
ほったらかしになった理由は、雑草と混ざって刈り分けるのが億劫だから。それともうひとつ、頭の隅にずっとあったのが、スイセンのことだった。
ニラとスイセンの葉はよく似ていて、間違えて食べると命に関わることがある。スイセンにはリコリンなどの毒があって、食べて30分ほどで嘔吐や下痢が始まる。加熱しても毒は消えない。厚生労働省が毎年注意を呼びかけていて、有毒植物の食中毒では死者も出ている。
数年前、京都の子育て支援施設で、給食の「ニラのしょうゆ漬け」を食べた園児12人が食中毒になったニュースがあった。正体は施設で栽培していたスイセン類。しかもその株は「数年前に知人からニラだと言われて譲り受けた」ものだったという。
……ご近所さんに分けてもらった株が庭にある身としては、ぞっとする話である。うちのニラは10年食べ続けてきた実績つきの本物だけれど、「もらった株を植えて、忘れた頃に摘んで食べる」という構図は同じなのだ。
だからうちの庭には、スイセンを植えていない。それでも雑草ごとガサッと刈ったとき、「変なもの混ざってないよね?」と手が止まる。この小さな不安が積もって、だんだん収穫しなくなっていた。
ちなみに見分け方はいくつかあるが、いちばん確実なのはにおいを嗅ぐこと。ニラはあの匂いがして、スイセンは無臭。ただし刻んで混ざってしまうと匂いでは分からなくなるので、本質的な対策は「食用の植物と観賞用の植物を同じ場所に植えない」ことに尽きる。厚労省の合言葉は「採らない・食べない・売らない・人にあげない」。
それなら、プランターにすればいい
最近うちで好調なスパルタ農法ブームに乗せて、この子も引っ越してもらうことにした。プランターに移せば雑草に埋もれないし、「これは間違いなくニラ」という管理もできる。苗代はゼロ円。10年もののタダである。
掘り上げた。

生えていた葉は切り取って、もちろん食卓へ。そして根っこも短く切り詰めた。新しい細かい根が出やすくなるらしい。ここまでやると、こうなる。

足がたくさんある生き物が苦手な方には、少々閲覧注意な見た目になってしまった。すみません。でもこれで生きているのだから、やっぱりすごい。
軽石主体のスパルタ用土に、浅く植え直して完了。

正直に書いておくと、ニラの株分けの適期は株が休眠している冬(12〜2月)か、秋(9〜10月)で、真夏は株への負担が大きいので本当は避ける時期らしい。またやってしまった。せめて朝夕の涼しい時間に水をやり、しばらく日ざしの強すぎない場所に置いて養生させることにする。
ニラは、覚えることが少ない
調べてまとめてみたら、ニラの世話は驚くほどシンプルだった。
- 収穫は株元3〜4cmを残して刈る。20日ほどでまた伸びて、年に4〜5回穫れる。刈ったら追肥
- 夏に花茎が立ったら、蕾のうちに摘む。咲かせると葉が硬くなる。摘んだ花芽は「花ニラ」として炒め物にできる=これも食べられる
- 冬に地上部が枯れても、死んでいない。休眠しているだけで、春にまた出てくる。多年草
- 2〜3年に1度、株分けで若返らせる。密生すると葉が細くなる。逆に言えば、株分けすれば何年でも続く
つまりこの子も、あさつき・わけぎに続く永久機関である。しかもニラは球根の掘り上げすら要らない。植えっぱなし界の横綱だ。
スタミナ食材としての実力
ニラの匂いのもとはアリシン(硫化アリル)。ビタミンB1の吸収を助ける働きがあって、B1が豊富な豚肉との組み合わせは理にかなっている。レバニラ炒めや餃子が「スタミナ料理」の顔をしているのは、伊達ではない。
我が家では餃子を基本100個作るので、ニラは欠かせない。チヂミにもよく使うし、豚味噌を仕込むときにも入れる。考えてみればぜんぶ豚肉と一緒だ。正しい使い方をしていたらしい。
ひとつ大事な注意。ニラも犬と猫には中毒を起こす。ネギの仲間はぜんぶそうで、加熱しても毒性は消えない。あさつきとわけぎの記事に詳しく書いたので、わんにゃんがいるご家庭はぜひ。このプランターも、うちのコの届かない場所に置いている。
玄関の、新入り
プランターは玄関のそばに置いた。このスパルタ用土は水はけが良すぎて、本当はズボラ向きではない。夏は毎日の水やりが要る。
でも、朝出かけるときと帰ってきたときに様子を見るのが、いまは楽しみになっている。10年間忘れられていたビンテージが、玄関で毎日眺められる存在になった。出世である。
| 植えたもの | ニラ(10年以上前にご近所さんから譲り受けた株) |
| 作業 | 掘り上げ→葉は収穫→根を切り詰めて株分け→軽石用土のプランターへ浅植え |
| 時期 | 2026年8月上旬(適期は冬12〜2月か秋9〜10月=真夏は本当は避ける) |
| メモ | 収穫は株元3〜4cm残しで年4〜5回。2〜3年に1度の株分けで若返る。スイセンとの混植は絶対にしない |
今日も角砂糖ひとカケ🧊
時価ゼロ円の、ビンテージ。