実家に帰ったら、鉢のハイビスカスがずいぶん伸びていた。

立派になったねえ、と言いながら、株元をのぞいた。
タグが挿さっていた。

色はすっかり飛んでいたが、文字は読めた。ミセスユミ。
あ、うちでサヨナラしたユミ夫人だ。
もとは、うちの庭で咲いていた
何年か前、うちの庭にハイビスカスがあった。濃いピンクの花びらの縁がオレンジににじむ、派手な花だ。

よく咲いたので、挿し木で増やした。増えた鉢のひとつを、実家にあげた。それが、目の前のこの株である。
そして——うちにあった本体のほうは、冬を越せずに枯れた。
ハイビスカスは暖かい国の木で、こちらの冬は寒すぎる。何度か越したことはあったが、あるとき力尽きた。以来、うちの庭にミセスユミはいない。
実家で、再会した
うちの庭からは消えた木が、実家では元気に伸びていた。あげたことすら、半分忘れていた。
株を分けておくというのは、こういうことなのだと思う。あのとき増やしていなければ、ミセスユミはうちの記録から完全に消えていた。
ひと枝もらって、帰る
というわけで、ひと枝いただいて帰ることにした。逆輸入である。
道中は、ペットボトルに水を入れて挿しておいた。ドリンクホルダーがちょうどよかった。

帰ってから、その一枝を四本に切り分けて挿した。葉は半分に切って、水の蒸発を抑える。用土は排水のいい粒状のもの。

土は、ブルーベリーの土をやめた
挿し木の土のことも書いておく。
うちで挿し木といえば、たいていブルーベリーである。そのときは鹿沼土とピートモス。どちらも常備してあるので、手が勝手にそちらへ伸びる。
ただ、この組み合わせはしっかり酸性の土になる。鹿沼土はpH4〜5、ピートモスも無調整のものは酸性だ。ブルーベリーはそれが好きだから正解なのだが、ハイビスカスが好きなのはpH6.0〜6.5あたりの弱酸性。酸性に振りすぎると根の吸収が悪くなる。
そこで、最近のマイブームである日向土にした。pHは6.5〜7.0でほぼ中性。硬くて粒がつぶれず、無菌で肥料分も入っていない。挿し床としては条件がそろっている。
そういえば挿し木には栄養のない土がいい、というのは昔からよく聞く。理由を調べたら、三つあった。
- 切り口が腐る——挿し穂には根がない。有機物や肥料は雑菌のエサになり、むき出しの切り口から腐敗が始まる
- 肥料焼けを起こす——根がないので吸えないうえ、発根の時期に肥料分が多いと枯れてしまう
- 栄養は根が出てからでいい——それまでは、要らない
市販の培養土は肥料が入っていて、腐葉土などの有機物も入っている。つまり「とりあえず培養土で」がいちばん失敗する組み合わせだった。
ところが細粒が手に入らず、小粒しかなかった。挿してみると粒が大きすぎて、枝が固定されない。ぐらぐらする。
そこでバーミキュライトを足した。倒れないようにするための思いつきだったが、調べてみたら、これが三つ効いていた。
- 保水力を足す——日向土はほとんど水を持たないので、単体では乾きすぎる
- 加熱処理されていて無菌——挿し木でいちばん怖い腐敗を防げる
- 細かくて隙間を埋める——挿し穂が固定される
日向土は単体で使うのには向かないと、どの解説にも書いてある。何かと混ぜるのが前提の土だった。倒れないように、というだけの理由で足したものが、たまたまその「何か」になっていた。
⚠️ひとつ注意。日向土もバーミキュライトも肥料分を含まない。挿し床としてはそれが利点なのだが、そのままでは育たない。根が回ったら、弱酸性の普通の培養土に植え替える。
一枝が、四本になった。
一度うちの庭から消えて、実家の一鉢だけが残っていた木が、また増えようとしている。
さて、どうなるか。
| 植えたもの | ハイビスカス「ミセスユミ」の挿し木(実家の株から一枝) |
| 作業 | 一枝を四本に切り分けて挿し木/道中は水挿しで持ち帰り |
| 時期 | 2026年8月中旬 |
| メモ | 葉は半分に切って蒸散を抑える。用土は日向土(小粒)+バーミキュライト。ハイビスカスの適地はpH6.0〜6.5なので、鹿沼土+ピートモス(強酸性)は避けた。日向土はpH6.5〜7.0でほぼ中性だが保水力がないため単体では使わない。肥料分がないので発根したら植え替える。ハイビスカスは寒さに弱く、こちらの冬は越せないことがある。株を分けて別の場所に置いておくと、本体が枯れても品種が残る |
ハイビスカスの話は、冬が終わった庭の、香りと復活と。にも書いた。あのころは、まだうちに咲いていた。
今日も角砂糖ひとカケ🧊
返り咲きは、これから。