🌱庭のつづり

引導、渡しそこねた。

最後に咲いたのは、2020年の8月だった。

2020年8月に咲いたプルメリアの白い花

写真の日付がそう言っている。8月16日、17日、24日。三日にわたって撮っている。よほど嬉しかったのだと思う。白い花びらの真ん中が黄色くにじんで、南の島の絵はがきみたいな花が、うちの庭で咲いていた。

花びらが開いたプルメリアの花

そのあと、咲いていない。

正確に言うと、うちに来てから二回しか咲かなかった。冬を越せないのだ。暖かい国の木なので、こちらの冬は寒すぎる。春になると、黒ずんだ枝だけが残っている。

三輪咲いたプルメリアとつぼみ

それでも、しばらくは希望を持っていた。枝が残っているうちは、まだ分からない。そう思って何もせずに置いていた。

でも今年は、春が来ても芽が出なかった。葉も出なかった。

さすがに、これは終わったなと思った。

そこで枝を切った。片づけるためだ。新しい何かが茂ってきたら、そのとき抜いて、別の木に置き換えよう。そういう段取りだった。実際、気の早いことに、すぐ隣に大八重クチナシの挿し木を挿してしまっていた。次の住人は、もう決まっていたわけだ。

雑草を抜いたら

ある朝、庭を見て、そろそろ雑草を抜かないとなと思った。

雑草に覆われたプルメリアの切り株

抜いた。

そうしたら、いた。

草を抜いたあとに現れたプルメリアの新芽

切り口のすぐ下から、緑の葉が束になって出ていた。草に隠れて、まったく見えていなかった。いつからそこにいたのかも分からない。

死んだと思っていた木が、片づけたはずの場所で、静かに葉を広げていた。

切り口のすぐ下から束になって出たプルメリアの新芽

切ったのが、効いたらしい

なぜ戻ってきたのか。調べてみたら、理由は二つ考えられた。

ひとつは、先端を切ると、眠っていた芽が動くという性質。植物は先が伸びているあいだ、そこから出る物質で下の芽を抑えている。先を落とすと、その抑えが外れる。切り口のすぐ下から出てきたのは、まさにその形だ。

もうひとつが、たぶんこちらが本命で、腐っていた部分を取り除いたこと。プルメリアが冬を越せないときは、寒さと湿気で幹が黒く腐り、それが下へ下へと進んでいく。黒い枝を残しておくと、腐りも一緒に残る。切って、切り口が乾いたことで、進行が止まった。

つまり、片づけるつもりでやった作業が、そのまま手当てになっていた。

引導を渡したつもりで、実は治療をしていた。

来年からの手順

調べたついでに、正しいやり方も分かった。

  • 冬が明けたら、枝を触って確かめる
  • 張りと瑞々しさがあれば、生きている。残す
  • 黒ずんでシワが寄っている、ブヨブヨしている部分は枯れている。健全なところまで切り戻す
  • 切ったあとは、気温が20℃を超えるまで何もしない。放っておく

「毎年春に切る」ではなく、「傷んだところだけ切る」。そして待つ。

今年やったことは、たまたま正解だった。来年からは、たまたまでなくやろうと思う。

植えたものプルメリア(鉢/屋外・地際に植えたまま越冬)
作業春に芽が出ないので黒ずんだ枝を切除(片づけのつもり)
時期最後の開花は2020年8月/切除は2026年春/新芽の確認は2026年8月
メモ冬越し失敗は寒さと湿気で幹が黒く腐り、下へ進む。張りと瑞々しさがあれば生きている。黒ずんでシワ・ブヨブヨの部分だけを健全なところまで切り戻し、気温20℃を超えるまで放置。先端を切ると側芽の抑制が外れて芽が動く

咲かない木の話は、咲かない庭。にも書いた。あちらはまだ答えが出ていない。

そして置き換え要員のクチナシは、抜かれるはずだった場所の隣で、しっかり根づいている。苗は増える。場所は増えない。——また同じところに戻ってきた。

今日も角砂糖ひとカケ🧊
切ったのが、手当てだった。