プードルを飼っている知り合いに「うち、毛が抜けないよ」と言われて、夫が耳を疑って帰ってきたことがある。
犬なのに。
うちは毎日えらいことになっているのに、抜けない犬がいるらしい。世の中は不公平だ、という顔をしていた。

これが日常である。黒い服に、白い毛。ちなみにこの膝は夫のものだ。
白いシャツに黒い星、黒いパンツに白い雪
うちのコは白黒のバイカラーなので、どの色の服を着ても必ず負ける。
黒を着れば白い毛がつき、白を着れば黒い毛がつく。逃げ場がない。「今日は毛が目立たない色にしよう」という作戦が、そもそも成立しない。
迎える前、「短毛だからトリミングもいらないし、お手入れは楽ですよ」と聞いていた。たしかにトリミングには行っていない。行っていないが、コロコロが手放せない。
その「毛が抜けない」がずっと引っかかっていたので、いい機会だから調べてみた。
犬の毛は、二階建てだった
犬の被毛には2種類ある。
| 正体 | 役割 | |
|---|---|---|
| オーバーコート(上毛) | 外側の、太くてしっかりした毛。目に見えているほう | 雨・紫外線・汚れから体を守る |
| アンダーコート(下毛) | 内側にみっしり生えた、短くやわらかい綿毛 | 保温・保湿。空気を含んで体温を保つ |
この2階建てを持っているのがダブルコートの犬。上の階しか持っていないのがシングルコートの犬だ。
そして換毛期にごっそり抜けるのは、下の階=アンダーコートのほう。冬用の綿入れを脱いで、夏用に着替えている作業である。だから「こんなに抜けて大丈夫なの」という量が出る。
プードルはシングルコート。下の階がないので、脱ぐものがない。
「トリミング不要」と「よく抜ける」は、セットだった
ここで、迎える前に聞いた話とつながった。
- ダブルコート=毛が一定の長さで止まる → トリミング不要。かわりに季節ごとにアンダーコートが抜ける
- シングルコート=毛が伸び続ける → 定期的なトリミングが必要。かわりに抜け毛が少ない
つまり「トリミング不要って聞いてたのに」の「のに」は、正しくは「だから」だった。裏切られたわけではなく、最初からそういう契約だったのだ。
ついでに知ったのだけれど、プードルは正確には「抜けない」のではなく「抜けても落ちてこない」らしい。巻き毛に絡まって、床まで届かないのだそうだ。そのかわり毛が伸び続けるので、月1回のトリミングが一生続く。
あちらはサロン代を払い、こちらはコロコロ代を払っている。払い方が違うだけで、どっちも払っていた。
で、この換毛期に終わりは来るのか
本題である。毎日ブラシをかけながら、ずっと考えていた。

調べたら、答えは二段構えだった。
いま抜けているぶんは、終わる
子犬にはパピーコートという、子犬だけのやわらかい毛がある。生後4〜6か月ごろから大人の毛に生え変わり、1歳ごろに落ち着く。これは一生に一度きり。
写真は生後6か月ごろのものなので、たぶんこれだ。あのとき服を覆っていたのは、二度と見られない子犬の毛だったことになる。そう思うと、コロコロをかける手が少し止まる。
でも、そのあと一生続くほうが始まる
子犬の毛が終わると、今度は春と秋の年2回、大人の換毛期が始まる。こちらは一生ものだ。
終わりはある。ただしその先がある。
しかも、室内飼いだと区切りすら消える
ここがいちばん驚いた。
犬は気温と日照の変化で「そろそろ衣替えだ」と判断している。ところが室内は、エアコンで一年中快適、照明で日照時間もあいまい。すると犬はいつ生え変わればいいのか分からなくなる。
その結果、冬に夏毛、夏に冬毛が生えたりして、一年中ダラダラと抜け続けるのだそうだ。
「換毛期が終わらない」という体感は、気のせいではなかった。飼い方が下手なのでもなく、室内で暮らしているという環境そのものが原因だった。
終わらせたいなら、外に出す
対策も、拍子抜けするほど単純だった。
暑さ寒さを感じさせること。外にいる時間をきちんと作れば、本来の換毛リズムが戻ってくる。
つまり——散歩が、抜け毛対策になる。毎朝目覚ましより先に起こしにくる係がいるので、うちはその点だけは安泰である。
そのほか、うちでやっていること・調べて知ったことを並べておく。
- ブラッシングは毎日。短毛にはラバーブラシ(写真のもの)が使いやすい。抜ける前に回収するのがいちばん早い
- シャンプーは月1〜2回。換毛期は排水口が詰まるほど抜けるので覚悟しておく(うちのシャンプー事情はこちら)
- 室温25〜26℃、湿度は60%以下。皮膚のためにも一定に
- 服についた毛はコロコロ。短い毛は繊維に刺さるので、長毛より取りにくい
🔴 ひとつだけ注意。左右対称に毛が抜ける、地肌が見える、フケが出る、しきりに痒がる——このあたりは換毛期ではなく病気のサインのことがある。「抜け方がいつもと違う」と感じたら動物病院へ。
ブラッシングは、作業ではなかった
結論。いま抜けているぶんは終わる。でも、その先がずっと続く。そして室内にいる限り、区切りは来ない。
覚悟はできた。……のだけれど、ここまで対策を並べておいて、最後にひとつ白状することがある。
ブラシは、気づいたほうがかける。私もかけるし、夫もかける。ところが終わったあとが、正反対なのだ。
私はコロコロできちんと取る。取らないと気持ちが悪いし、そのまま出かけるなんて考えられない。
夫は、取らない。
始めたころは、ブラッシングを「抜け毛を回収する作業」だと思っていたらしい。でも実際にやってみると違ったそうだ。ラバーブラシで撫でているあいだ、やっていることはずっとイイコイイコなのだと。気持ちよさそうにしているのを見ていると、抜け毛のことなんてどうでもよくなってくるらしい。

この子はブラシをかけられていると毎回ブラシを噛みに来る。抜け毛を取っているのか、おもちゃで遊んでいるのか、途中から分からなくなる。たいてい、分からないまま終わる。
そうやって愛でていると、気づいたときには膝の上が毛だらけになっている。
でも夫は、それを見ても、もう「うわ」とは言わない。いわく、「さっきまでの時間の、残り香みたいなもの」なのだそうだ。そこに毛がついているということは、それだけ長く撫でていたということで。
だから、取らなくなったらしい。
そして最近は、そのまま出かけていく。
一度、玄関で「ついてるよ」と教えたことがある。返ってきたのは「いいの」だった。取らないのではなく、つけたまま行きたいらしい。
わざとだった。
ちなみにこの写真を撮った夜、同じ毛だらけの膝を撮ってSNSに上げている。そのとき流していたのが、この話をそのまま曲にしたものだった。歌の中では「わざとじゃないよ、たぶんね」と言い訳している。
あの夜から、たぶんが取れた。
止めるのはやめた。どうせ聞かない。
| うちのコ | ボストンテリア(バイカラー・短毛のダブルコート) |
| 写真の時期 | 2026年5月・生後6か月ごろ(パピーコートの生え変わり期) |
| 道具 | ラバーブラシで毎日。コロコロは私だけが使っている |
| メモ | 子犬の毛は1歳ごろ終わる。そのあと春秋の換毛期が一生続く。室内飼いだと区切りが曖昧になり通年で抜ける |
今日も角砂糖ひとカケ🧊
毛だらけのまま、出かけていった。