毎年恒例の箱が、今年も届いた。
友人が送ってくれる、完熟の宮崎マンゴー。ふたを開けると、赤い宝石がきらきら並んでいる。今年も立派。ありがたや。

さっそく冷やしていただこうと支度をしていたら、背後で、かさり、と音がした。
振り向いたら、現行犯だった。

空き箱に入っていたパンフレットを咥えて、こちらを見上げている。目が合っても、返す気配はない。「これはもらった」の顔をしている。
うちわの前科があるので、知っている。ここで追いかけると、加速する。今回は泥棒を泳がせて、マンゴーを優先した。宝石には目もくれず紙を選ぶあたり、うちの泥棒の審美眼はよくわからない。
マンゴーは無事だった。とろとろで、甘くて、今年もほっぺたが落ちた。
さて、おいしく食べ終えたところで、考えなければいけないことがある。部屋の隅の、あの鉢だ。

去年のマンゴーの種から発芽した子で、室内で冬を越して、いまも元気に葉を広げている。問題は、この子の今後だ。実はマンゴーの実生には、負けが込んでいる。1回目は、発芽したその年に地植えして、冬に見送った。2回目は、室内で冬を越させてから翌春に地植えして、次の冬に見送った。マンゴーループの記録は、しっかり残っている。
3代目のこの子は、どうするか。また地植えに挑むか。外に出して鉢のまま管理してみるか。それとも、このまま室内で観葉植物コースか。
「まあ、失敗しても今年の種があるし」
と、保険のつもりで、食べ終えた種を開けてみた。

ちっさ。
殻の中にいたのは、糸みたいな軸の先にちょこんと付いた、豆粒ほどの胚だった。去年はぷっくりした種から元気に発芽したのに、今年のは明らかに中身が育っていない。
いつもなら、ここから水に浸けて、芽が出るのを待つ。今年も一応、浸けてみた。

浮かんだ。
沈む気配すらなく、ぷかー、である。判定終了。調べてみると、マンゴーの種には胚がほとんど育っていない「しいな」と呼ばれる状態があって、小さくて薄い種は発芽しないらしい。果肉が完熟でおいしいことと、種が育っていることは、別の話のようだ。
保険がなくなった瞬間、部屋の鉢が急に尊く見えてきた。バトンは来ない。今の走者に、長生きしてもらうしかない。
置き場所は、熟考中。結論が出たら、また書きます。
今日も角砂糖ひとカケ🧊
頼みの綱が、文字どおり細かった。