読んだのは、少し前だ。
細部はもう忘れている。あらすじを聞かれたら、たぶんうまく説明できない。でも後味だけが、まだ口の中に残っている。

『おいしいごはんが食べられますように』。タイトルから想像するより、ずっと苦い話だった。
悪人がいない。なのに息苦しい。職場の、善意が圧になる感じ。おせっかいな人は悪くない。でもしんどい。そういう構造がずっと続く。
一番刺さったのは「マシでしょ」という言葉だった。
花粉症の人も、体調が悪い人も、押尾からすれば「同じ」だ。でも周りは「あっちよりマシでしょ」で片付ける。我慢してる側の理不尽さが、静かに積み上がっていく。
「みんな自分の仕事のあり方が正しいと思っている」という一節が残っている。正しさのルールが違う人間同士は、最初から話が噛み合わない。それがわかっていても、関係は続いてしまう。
食べ物の描写が異常にうまかった。美味しそうなはずのケーキが、不味そうに感じる。歯茎の間に残る甘さ。感情で味が変わる、その描写がずっと頭に残っている。
ラストは、最悪の味がした。でも関係は続く。
後味が悪い本だった。おいしいごはんが、食べたくなった。
今日も角砂糖ひとカケ🧊
「マシ」は、我慢してる側を黙らせる。

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